リバロス キャニオニック60M
バイラ50HMD(ヘビーミディアムディープ)
Sヒメマス(出商店・オリジナルカラー)
バイラ50XMD(エクストラミディアムディープ)
TS(出商店・オリジナルカラー)
ステラC2500HGS
PEライン0.6号&ナイロンリーダー14ポンド
ハンドメイド
ブレイドバー ブロンズ
北海道 猿別川(さるべつがわ)
2017年4月1日
午後0時&午後2時15分
晴れ
−2.5〜4℃
8℃
アングラー:BEAR DOG 五十嵐(ベアドッグいがらし) 北海道恵庭市在住

今年に入ってからの河川への釣行は、今日が4回目だろうか?
はやる気持ちを抑え、素早く身支度を済ませて車に乗り込んだ。
辺りはまだ暗い。いつもの十勝川水系遠征である。
向かう先がいつも十勝だから、これを遠征と呼ぶのは少しおかしいかも。
釣り道具は前日の夜に積み込んであった。

今日はちょうど前日に長野県から届いた新作の、
「出商店の『バイラ50HMD』と『バイラ50XMD』のオリカラ3色を使おう」
と心に決めていたので、
それ以外のルアーは浮気防止のため部屋に残してある。
3色のオリカラたちで、絶対に結果を出したい。

午前6時過ぎには川にいた。どうやら一番乗りらしく、辺りに人は居ない。
しかしまだ寒い。そばにある水たまりは凍っている。
「魚の活性はどうだろうか?」
この川まで来る道中、何度も思い描いていた今日の課題は二つ。
一つは『バイラ50HMD』と『バイラ50XMD』のオリカラで釣果を出すこと。
もう一つは、根掛かりによるロストを恐れずにドリフトで釣果を出すこと。

釣り進んでいくと、最初の大場所が現れた。
『バイラ50HMD』をアップクロスにキャストし、十分沈める。
まるで小学生の時にやっていたエサ釣りのように、
リールは糸ふけを取る分しか巻かない… 巻かない… 巻かない…
糸の動きが止まり、根掛かりかと思ったが、
反射的にアワセた時、その糸が走る。
「魚だ!」

小さいがバラさないようにコントロールしてランディング。
「よし、幸先がいい!」
同じポイントでアメマスも追加したところで、
”STEW熊澤(シチューくまざわ)”さんにLINEで連絡をした。
すると電話がきて、今いる札内川(さつないがわ)からこっちの猿別川に来るらしい。
「せっかく来るなら現場で合流したいなー」
と勝手に、空気を読まずに”STEW熊澤”さんの到着予定場所へ移動開始…

しかしもう本人の近くまで来ているはずなのに、全くその場所にたどり着けない…
「ん? おかしいぞ?」
左岸に堤防? 堤防なんてない! これは絶対に茶化されている!
一方的にそう思っていたところ、電話が鳴った。
「いったい、何処にいるんだ?」
と”STEW熊澤”さん。
「あっ! 間違えている…」
猿別川だと思っていたこの川は、実は糠内川(ぬかないがわ)だった…
十勝川水系の枝分かれした別の支流を、誤って猿別川だと思い込んでいた。

その後無事に”STEW熊澤”さんの車を遠くに発見。そちらへ向かう。
その途中、あまりの渓相の良さにルアーをキャストしてみた。
『バイラ50HMD』で深みのボトム付近をトレースし、ターンさせ、
手前の浅瀬まで戻ってきてしまったときに事件は起こった。
浅瀬まで追って出た魚体を見て、一瞬その目を疑う。
それは秋に遡上するカラフトマスをほうふつさせるような、
鮮やかな赤色を全身にまとったニジマスで、『バイラ50HMD』を襲った。

「え? ここで?」
と思う間もなくファイトが始まる。
大型魚特有のトルクのある大きな首振りをしたあとは、
ドラグを鳴らしてPEラインを出しながら下流へ走る。
その下流にはストラクチャーが絡んだ瀬が待ち構えている。しかし魚は止まらない。
40歳過ぎのおっさんが河原を走らされる格好だ。
その後なんとかランディングに成功した。
「やった〜!」
”STEW熊澤”さんと合流する前に50cmアップを捕ってしまった!
直ぐにLINEで写真を送付すると返信が。
「おめでとう」
顔を上げると上流から本人がやって来ていた。

時間は昼で、そこから移動することになった。
車まで戻ると私の車を先頭に堤防までの斜面を上り、
そこから外の道路に出ようとしたが、堤防へ上る途中でスタックしてしまった…
アクセルを思いっきり踏んでも、意に反して車は動かない。
さらに、上を向いていた車体が一瞬で、坂の途中で横向きになってしまった。
ドアを開け、下にいる”STEW熊澤”さんに謝る。
「いやいやいや、お前は邪魔しかしないもんなぁ〜!」
と”STEW熊澤”さん。
「ごめん」
それ以外に返す言葉がない…

車はあと数十センチ後退すると自動的に崖の下へ転落してしまう位置。
車体のノーズは既に地面に触れていて、
ロードサービスの救助を呼ぶ以外になさそうな状況… 最悪だ。
すると突然”STEW熊澤”さんが、窓の開いている車のドアを左手でつかみ、
「踏め!」
と叫んだ。言われたとおりにアクセルを踏んだ。
その状態で”STEW熊澤”さんが1回、2回と車体をあおると、
次の瞬間、フロントウインドーから見える景色が変わった。
なんと”STEW熊澤”さんは左腕1本で車の向きを変えてしまった。
信じられない怪力だ。そして涼しい顔で言った。
「もう大丈夫だ! バックで堤防まで上がって行け!」

まさかの脱出劇の後、上流へ移動。
そして堰堤がある絶好のポイントに近づいた。
そこは岩盤帯が続き、深みのある魚の付き場だった。
“STEW熊澤”さんが下流側でキャストし、私が上流側でキャストする。
直後、下流の”STEW熊澤”さんがヒットさせた魚のジャンプが視界に入った。
「デカそうだ!」
と思った時、ドリフトさせていた私の『バイラ50XMD』が止まった。
反射的にアワセると独特の重みが『リバロス キャニオニック60M』に乗った。
「おっ! キターーーーーーーッ!!!!!」
と叫んだ。ヤバい、ダブルヒットだ!

今まで長いこと釣りをしてきたが、
このサイズたちがこんなに至近距離でダブルヒットするなんて、経験がない。
この魚が走ったらすぐ下流の”STEW熊澤”さんの魚とオマツリになる。
「ヤバい!」
「お前のデカいのか?」
と”STEW熊澤”さん。
「ああ、結構デカいは!」

すると、いつもは余裕をもってじっくりとファイトする”STEW熊澤”さんが、
あっという間に本人の魚をランディングしてしまった。
心の中で申し訳ないと思いながらも、その意に反し魚は下流へ走る。
春先の産卵後の魚とはいえ、こればっかりは止められない。
そしてこのサイズともなれば、川底に張り付いてなかなか寄ってこない。
慎重にファイトを続けて、何とかランディングに成功した。

「デカそうだな!」
と”STEW熊澤”さん。

スケールをあてると59cm、雌の美しいニジマスだった。

携帯電話で写真を撮っていると、
「ニコパチ撮ってやるよ」
と言われ、
「そういうの1枚もないんだよね〜」
と私。ぎこちなく魚を抱きかかえ、記念撮影をお願いした。

リリースして流れに戻る魚を確認した後、ガッチリと握手。
「おめでとう!」
「ありがとう!」
「満足かい?”」
そう聞かれ、満足だよと答えると、
「俺は不満だよ、ロクマルが捕りたいよ!」
と”STEW熊澤”さん。満足だけど、それは私も同じ気持ちだ。

今日は課題としていた出商店・オリカラでの釣果とドリフトでの釣果という、
二つのことを達成できたことに素晴らしい充実感を感じ、川を後にする。
家路につき帰宅までの2時間半、
「いったい今年はどんなドラマが待ち受けているのだろうか」
と私は期待に夢を膨らませていた。
とても充実した一日だった。

家に着き夜になってから、”STEW熊澤”さんからLINEが届いた。
「お前、気付いたか?」
「ん?」
あっ!
”STEW熊澤”さんの今日の釣果は、
あのダブルヒット時の51cmのニジマスだけだと思っていたが、なんと…
彼のInstagramにアップされている別のデカいニジマスはいったい…
「ヤラレタよ! 流石だね!」

なんと彼は私と合流する前、すでに55cmの雄のニジマスを捕っていたのだ。
それでも満足せず、あくまでもロクマル狙いの”STEW熊澤”さん…
そんな彼に私は一歩でも近づきたいと思いながら、
満ち足りた疲労感に包まれてビールを飲みました。
「待っていろ、ロクマル!」