午前4時、目覚まし時計も掛けていないのに自然と目が覚めた。
寝坊の常習犯のぼくにとっては奇跡のグッドモーニングだ。

目指すは札内川。
最近、近くの川でヒグマの目撃報告があったから、
熊撃退スプレーと熊鈴を忘れていないかしっかりと確認した。

でもそのヒグマは、実はクマにそっくりな顔の大きな犬とのうわさもある。
ぼくは猫派だから、それも不安になる。
狙っていたポイントに到着すると、平日にもかかわらず先行者が4〜5人入っている。
先行者が居ないであろう上流域にそのまま向かう。

今回もスプリーモの関さんの厚意をむげにして『バイラ50M』（プロト）をリペイントした、
ぼくがぼくであるためのスピリチュアルカラー第2弾、
「シマウマのようなカラー」を結び釣り上っていく。

各ポイント、ポイントから、
30cm前後の元気なニジマスが次々と顔を出し楽しませてくれる。
すると小1時間ほど行ったところで、今までと違うアタリ！
アワセを入れると2発のジャンプ。そして何とかバラさずに無事ランディング。

「おっ、50cmはあるかな？」
ウキウキで計測。
「あれ？ 49.7cm？ 49.8cm？」
見間違いかもしれないのでもう一度。
49.8cm。

とりあえず記念撮影に付き合ってもらう。さらにもう一度測ってみる。
もしかすると撮影中に成長したかもしれない。
49.8cm。
完璧なまでに49.8cmのニジマスのようだ。
あと2mm成長したらまた会おうと固く約束をしてリリースした。

先々週の56cmに続き、とてもうれしい。
十勝に移り住み3年目にしてやっと感じる、ぼくがぼくである日々の充足感。
今ならクマにそっくりな顔の大きな犬が出てきても、優しく接してあげられる！
その反面…
関さんの『バイラ50M』（プロト）油性マジック手塗り仕上げカラーをまたむげにして、
内緒でリペイントした「シマウマのようなカラー」で釣ったことに、胸が超痛む…
今日はもう、スピリチュアルカラーは封印しよう。
送られてきたままの油性マジック手塗り仕上げカラーで勝負だ。
今のぼくらしいぼくならできるはずだ、そうだ、恩返しだ！

『バイラ50M』、『バイラ50H』、『バイラ50XH』（各プロト）たちを、
流れの様子に合わせて使い分けながら釣り上がる。
頻繁に出てくるのは、やはり30cm前後の元気なニジマスたち。
しばらく行くと、いかにもというポイントが現れた。

油性マジック手塗り仕上げカラーの『バイラ50M』（プロト）をキャスト。
するとキラキラと流れに乗りターンをした瞬間に、
『リバロス キャニオニック52L』が強く押え込まれた。
水面に水飛沫を上げて、大型の魚が激しく抵抗する。
ライトタックルなので無理はできない。焦らずゆっくりファイトを楽しみランディング。
「さっきよりは少し大きそうだ」
そのニジマスのサイズは52cm。

今回もプロトの『バイラ50M』で釣ったので、
半分はぼくの魚ですねと関さんに言われるだろうと思い、報告をするか迷った。
でも、送られてきたままの油性マジック手塗り仕上げカラーでの50cmアップ。
ついに恩返しができた、そのうれしさを抑えられずに報告をした！
「いいですね〜 おめでとうございます！」
と祝福の言葉を掛けてくれる。
そろそろまた、半分はぼくの魚ですねと言われるのだろうか…
そう心構えをしていたら、関さんが、
「急に『バイラ』が見たくなったので、今日中に全部返送してください」

えーーー！
送られてきたままの油性マジック手塗り仕上げカラーで釣ったのに！？
手塩に掛けたスピリチュアルカラーまでも…
結局カラーは何でもよかったんだ…
でもシカトして返送しなければ、このままの幸せなぼくでいられる。
…ムフフフフ（笑）。

その後、札内川のさらに上流域や、
隣の戸蔦別川（とったべつがわ）で小さいニジマスたちに遊んでもらい納竿。

家に帰り、2匹の大型ニジマスにハイボールで祝杯をあげる。
一つも返送しなかったプロトの『バイラ』たちを手に取り、うっとりと眺める。
ぼくがぼくであるために今日もやってやったぞ感が、胸を温かくする。
と、メールの着信音。
見てみるとスプリーモの関さんからで、
「プロトの『バイラ』での釣果ですので1匹はぼくの魚ですね」

えーーー！ 今度は半分じゃないんだ…
1匹丸ごと、全部持っていくんだ…
なんで2匹も釣ってしまったんだ…

ハイボールが止まらない。トラに狙われたシマウマの気分だ…
どんなに目覚まし時計が鳴っても、明日は寝たきりだろう。