リバロス ブレイドウィザード86MH
ロンズ スローシンキング9cm LGブラック/オレンジ
ステラC3000HG
PEライン1.5号&ナイロンリーダー20ポンド
プラウ90SL
ブレイドバー シルバー
ネットバンド ブラック
コットンツイル・ロゴキャップ ダークブラウン
富山県 庄川
2012年4月28日
AM8:30
晴れ
未計測
未計測
アングラー:荒井尚志(あらい ひさし) 長野県安曇野市在住

釣れない言い訳を考えながら川を歩く釣りは楽しいか?
状況の良し悪しにかかわらず結果を導き出すことのできる人達と比較し、
自分とは何が違うのかよく考えてみよう。

あれから1年。
好調な仲間たちを横目にもがき続けた昨シーズンの神通川(じんつうがわ)。
焦燥感漂う変な汗はもうごめんだ。
1匹の重さじゃなくって、よりたくさんの感動とより多くの1匹の重さを感じたくて…
真夜中の曲がりくねった山間部、暗闇のなかを右へ左へハンドルを切り、
夜明け前までにと目的地まで車を飛ばして、
今週もようやく富山県庄川(しょうかわ)にたどり着いた。

…しかし相も変わらず土曜日があっという間に過ぎ去り、
日曜日の午後にはふと釣れない言い訳が口元からこぼれ出す。
「水量が、水温が、集中力が、先行者が…」
負のオーラを全身に纏った敗者の釣り人の足取りは鉛のように重く、
永遠に感じられるほどに帰路が途方もなく遠い。はぁ…

深い縁が結びつけてくれたおかげで4月終わりごろ、
憧れの『プラウ90SL』が僕の新しいパートナーに加わった。
インテリジェンスに満ちたその容姿から、釣りのお洒落を独り占めといったところだ。
以前の「オーナーズパーティー!」に投稿のあった、誰かの喋る『ロンズ』。
そんな馬鹿なと思っていたが、
何とこのプラウも何かの物語で宝箱を開けたときのような一瞬の輝きを放ち、
僕に優しく語りかけてくるではないか。

「今日からよろしく。大鱒をかけたときは私が一撃で掬ってやるから任せてよ、
あなたを信じるから、どうか雨の日も風の日も、
そして悩める日も、大鱒と出会うためにあなたとずっと一緒にいさせてよ」

女かっ!?
強い口調のなかにはっきりとした意思表示。
凛とした姿のなかにたまらない魅力と優しさが滲みでていた夜。
ベッドの横に「ウィリアム・ヴィーナス」と名付けた『プラウ90SL』を置いて、
その夜は深い眠りに就いた…
『プラウ75SL』が「シャラポワ」…
『プラウ90SL』は「ウィリアム・ヴィーナス」…
と呟きながら。
数十本の中に1本存在するかしないか、
と言われる女性の『プラウ』を手に入れた僕は、
最高にラッキーでハッピーな人間だと実感した。

『ロンズ』で誘って『リバロス』で掛けて『プラウ』で掬う。まさに三種の神器で大鱒を。
これからより多くの感動とより多くの1匹の重さを感じるための、
サポートをしてくれるたくさんの仲間との出会いに今一度感謝したい。

ひとつの場所で粘るような釣り方と、
ルアーにイレギュラーなアクションを加えないステディーリトリーブが僕にはできない。
今後の課題だ。
こうしなきゃとかそれは違うとか、そんなやり方でとか、
周囲の雑音をシャットアウトして自分の釣り方で自由に思うがまま、
テイク・イット・イージーでいこうか。
するとどうだろう、川を歩くたびに新たな発見があり、
幾つもの興味となって頭をかけ巡り、川のデータが蓄積されていく!
固定観念に捕らわれ悩み過ぎると、せっかくの休日が楽しくなくなってしまう。
僕の人生のモットーは楽しく! の筈だ。

ルアーを投げる度に高まる期待と、弾む足取りはもう止められない。
ゴールデンウイークに差し掛かるころには、
負のオーラは自然と僕からは離れて消え去っていき、あとは釣るだけ。

ラインスラックを利用した『リバロス』の反発力を受けて、
『ロンズ』はさらに活き活きと川を遊泳し、
同時にそれは大鱒をバイトさせる導火線に火をつけたようだ。
ついに庄川のサクラマスが『ロンズ』のベリーにがぶりと口を使った。

慌てない。
「待っていたわよ!」
「ウィリアム・ヴィーナス」は叫んだ。
「少し小型だけど、これはサクラマスだから私に任せて」…

『プラウ75SL』にジャストな52cmを『プラウ90SL』で余裕のネットイン。

あのときの僕はそんなに冷静じゃなかった。
いつだって欲しいと願った鱒を目の前にすると、
僕の心臓ははち切れんばかりに高鳴る。

4月28日の出来事。
あのとき「ウィリアム・ヴィーナス」は、
より大きな大鱒を、より美しいサクラマスを欲していた。

そろそろ釣れる訳を考えながら釣りをしようじゃないか。