リバロス ブレイドウィザード90H | |
ロンズ スローシンキング9cm Gブラック | |
ステラ4000XG | |
PEライン16ポンド&ナイロンリーダー20ポンド | |
プラウ90SL | |
ブレイドバー シルバー ネットバンド セージグリーン |
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長野県 犀川 | |
2012年3月26日 | |
PM2:05 | |
晴れ | |
未計測 | |
5.9℃ |
念願の『リバロス ブレイドウィザード90H』を手に入れたので、
北陸方面の本流へサクラマスを釣りに出掛けた。
ところが現地に近づくと物凄い大雪で、スタッドレスタイヤでも危険な感じ。
これでは河原は歩けないな… と考えてサクラマス釣りを断念。
しかしどうにも新しいロッドの調子をみたくて、大きく場所移動することを決意。
今シーズン初となる長野県の犀川(さいがわ)下流域に向かった。
到着してみると、数日前の雨による増水と濁り。
それでも来てしまったからには仕方がない、様子をみてみようと、
昔、流れの鱒釣りを教えてくれた先輩に伝授してもらった実績のあるポイントへ。
そのポイントのなかほど。
次第に水深が浅くなり、ラインの先に結んである『ディノバ80DR』の潜りでは、
ゴツゴツとボトムに当たりすぎてしまうようになってきた。
すかさず『ロンズ スローシンキング9cm』の大好きな金黒に換え、
ゆっくり時間をかけて川底に沈める。
『リバロス ブレイドウィザード90H』を立てて構え、リーリングを開始。
ロッドを立てて泳がせても『ロンズ』は浮き上がり難いため、
この引き方がお気に入りだ。
リーリングの最中、静かにトゥイッチをかけて誘いを入れる。
そのアクションに『ロンズ』は、機敏にギラギラと反応してくれる。
そして決して水面から飛び出さない。
んー、『ロンズ』最高ーっ、チュ!
突然、大好きな『ロンズ』が何者かに襲われた。大丈夫か!?
自分のウェーディングシューズは不良品だったのか、左右の色が微妙に違う。
片方は緑色、もう片方は茶色のコケティッシュなマイシューズが、
ひざ下の水深で見えなくなる濁りの強い犀川で、まさかのヒット!
掛けた瞬間、ニゴイかと思ったが、PEラインから伝わる感じは鱒っぽい引き味。
「先輩、たぶん鱒っ…」
ロッドを曲げてためながら思わず言葉が漏れる。
突如、魚は川の流れに乗り、グングン、グングンと下流に走り出した。
『リバロス90H』を寝かせて走りに耐えていると、魚が水面に躍り出た。
銀化した大きなブラウントラウトだ!
「先輩、やっぱり鱒っ…」
相手が鱒と分かると、その緊張からか、
いつの間にかホッペタをパンパンに膨らませていた。
寒く長い冬の間、来る日も来る日も独りでイメージトレーニングを重ねていた、
絶対自信、お待ちかねのファイトスタイルだ。
この恥ずかしいスタイルで遠くの鱒にプレッシャーをかけ続ける。
こんな姿を意中のあの子に見られたくない…
でもちょっとは見てほしい、もっと素顔の自分を知ってほしい…
いろいろ悩ましい状況のなか、徐々に間合いを縮めていく。
パンパンのホッペタを見て鱒は観念したのか、
抵抗をやめるとみるみる足元まで寄ってきて、
まるで子犬のように白いおなかをこちらに向け、弱々しく尻尾を振ってみせた。
降参の合図なのか…
「これが俺の鱒釣りだぁー!」
熱い胸の中で雄叫びを上げながら、『プラウ』で鱒を荒々しくすくい上げる!
…決まった。この男らしい自分をあの子に見てほしい。
河原に横たわるいとおしいブラウンの魚体を眺めながら、
鈍く光るオイルライターでたばこに火をつける。
本当は、この時たばこを吸っていないけど、最近読んだ小説の影響から、
闘う男のハードボイルドな気分になりきってみた。ニヒルな世界だ。
実際は、感動と水の冷たさでその手は普通に震えていた。
そして、おもむろに携帯電話を取り出し、掛けなれた番号に発信する。
高ぶる感情からか、相手が携帯電話に出るなりまくし立てていた。
「先輩っ、やりました、ブラウン63cm! 90H入魂しました!」
しばしの沈黙のあと、先輩が静かに口を開いた。
「いいぞ、おめでとう。2012年初の昇格試験は合格だ」
「うっ、ありがとうございます…」
いろんな気持ちが入り乱れ、自然と自分の目には涙がたまっていた。
言葉に詰まり、まともに話ができない。
昔、先輩と一緒に…
慣れない灼熱の洋上で、全身真っ赤にやけどのような日焼けをしながら、
GTを狙って何日もポッピングし続けた沖縄…
「でかいアオリイカが釣れるらしい」という情報だけでポイントも知らずに出掛け、
夜通しエギを投げまくって約半周してしまった秋の伊豆半島…
夕マズメ、もう諦めかけていた時、『ロンズ フローティング』の激しいトゥイッチングに、
まさかのバイトで仕留めた神通川のサクラマス、あの美しい春の夕日…
先輩はいつでも、自分が釣りをする背中を優しいまなざしで見つめてくれていた。
昔は釣りといえば、いつも隣に先輩の笑顔があった。
馬鹿なことを言い合いながら、ずっと一緒にルアーを投げていてくれた。
先輩の後押しがなかったら、今の自分はない。心からありがとうございます…
長い沈黙の後、先輩が口を開いた。
「いいか。もう金黒は禁止だ」
何か言い返そうと考えている間に、通話は切られていた…
なんの制約? もう金黒を使ってはいけないのか? なんで?
これは新たな昇格試験なの、先輩!?
2012年。今年も流れの鱒釣りは波乱の予感…